?雲海?に包まれた松江城天守=6月28日、松江市殿町
?雲海?に包まれた松江城天守=6月28日、松江市殿町

 夕闇の松江城天守を包み込むように上る“雲海”。水墨画の掛け軸を思わせる幻想的な世界が広がった。先週末スタートした「八雲立つ 雲海・松江城」の一幕だ。

 長さ320メートルの配管を使って人工雲海を出現させる仕掛け。ヤマタノオロチなどを投影するプロジェクションマッピングや立体音響の演出が来場者を魅了している。松江城天守の国宝指定10周年を記念し企画された特別イベント。あの祝賀ムードから10年もたつのかと感慨に浸る。

 こちらも10年の節目を迎えたが、「まだ解消されないのか」といういらだちしか湧いてこない。参院の「1票の格差」是正に向け、有権者数の少ない「鳥取・島根」「徳島・高知」で合区を導入する改正公選法が成立したのが2015年7月28日。松江城国宝指定の20日後だった。

 改正法の付則には、19年選挙までには抜本的な見直しを行うと記していた。ところが合区はいまだ解消の気配がない。「実害」を受けているのは有権者だ。中山間地域や離島の町村は候補者との距離がさらに遠くなった。国政への関心が薄れ、投票率が下降線をたどるのも必然か。

 4度目の鳥取・島根合区選挙区となる参院選が公示された。物価高騰、少子化、社会保障制度…。われわれ山陰の有権者を包み込むのは、国宝の雲海とは対照的な暗雲ばかりだ。出馬した5人には、そんな雲を振り払う実効性のある政策を提示してほしい。(健)