青々と育つ稲。「適正価格」で米の持続的な供給につなげたい=鳥取県内
青々と育つ稲。「適正価格」で米の持続的な供給につなげたい=鳥取県内

 「適正価格」とは一体いくらを言うのだろうか。安いほどうれしい消費者。できるだけ良い値で、と願う生産者。「令和の米騒動」があらためて浮き彫りにした両者の溝。数字をただ追いかけていても折り合いは付かないだろう。

 米の店頭価格は、元をたどれば、JAから農家に前払いされる「概算金」に左右される。JAと卸売業者との取引の前段階で、在庫や相場を踏まえ「いくらで売れるか」で決定。生産コストを割ることもあった。

 2025年産米の概算金で、JA全農鳥取県本部が資材、労働を含めた費用を積み上げ、コスト割れのない「生産費払い」を適用した。価格決定の在り方に風穴をあける動きとして注目される。

 概算金額は銘柄一律2万2千円(1等米60キロ当たり)。24年産コシヒカリより5千円も高い。事業者間の集荷競争が激しくなる中、本部長の小里司さんは「米を集めるために概算金を積む、というのとは筋が違う話」とする。

 というのも、改正食料・農業・農村基本法と新法「食料システム法」の柱の一つが、食料の持続的な供給のための合理的な費用を考慮した価格形成だからだ。小里さんは「お金を払うならどういう理屈か。消費者にちゃんと説明できることが大事」と強調する。これこそが消費者と生産者の溝を埋める鍵。双方の「納得」だ。今の騒動は、互いを知り持続可能な関係づくりを始めるチャンスなのだと思う。(吉)