参院選が公示され、街頭演説に耳を傾ける人たち=22日、名古屋市内
参院選が公示され、街頭演説に耳を傾ける人たち=22日、名古屋市内

 あんパンにコーヒー牛乳、カレーうどん。抹茶アイスやたらこスパゲティもそうだろう。異質なモノや文化を取り入れて混ぜ、自分たちの好みや使い勝手に合わせて作り替えるのが日本文化の特性で、思想家の内田樹(たつる)さんによれば「一番いいところ」なのだという▼そういえば日本語自体、そんな歴史を持つ。中国伝来の漢字を正式な文字「真名」とし、自国で考案した字を「仮名」(片仮名、平仮名)と呼んで交ぜ、アルファベット表記まで取り込んだ。幕末以降は文字だけでなく、和製漢語や和製英語も数多く生み出してきた▼こうした日本の特性を、内田さんは「習合」をキーワードに説明していた。歴史の教科書で習った「神仏習合」、つまり古来の神様と伝来の仏様が融合・調和するイメージだ。今では冠婚葬祭や年中行事で和洋折衷が進み、クリスマスやハロウィーンも定着した▼それまでとは異なる考え方という点では、敗戦を機に米国の監修下で作られた日本国憲法も同じ。その9条がうたう「戦争放棄」と自衛隊は、普通に考えれば相いれないものに映る。しかし、日本文化の特性のせいなのか、七十数年の間に違和感は薄れ、国民になじんできた▼異質なものを排除せずに取り込み日本流にアレンジしてしまう文化。その「一番いいところ」をこの先どうするか。始まった参院選の争点の一つ憲法改正問題にはそんな側面がある。(己)