日本語で捉えにくい概念の一つに「スポーツ」がある。英語から置き換えれば「運動」「体育」あたりだろうが、語源的にも英語にはある「楽しむ」というニュアンスは出ない▼初代スポーツ庁長官の鈴木大地氏が在任中、こんな説明をしていた。日本は「教育」、欧州は「文化」、米国では「ビジネス」だと▼国内では、時代によって定義も変わる。スポーツ振興法(1961年制定)は「運動競技および身体運動」「心身の健全な発達を図るためにされるもの」とした。スポーツ基本法(2011年制定)は「世界共通の人類の文化」とする。「eスポーツ」と呼ばれるコンピューターゲームも含むかどうかとなると、まだ抵抗はあるが、スポーツが生活を豊かにする文化だとすれば、合点はいく▼バスケットボール、サッカーなどで、今や山陰両県にもプロやアマチュア最高峰のチームがあり、選手とも触れ合える。意義を考えると、それらがもたらす喜びは、文化の芽なのだろうと思う▼東京パラリンピック自転車競技アイルランド選手団の事前合宿地・益田市で先日、選手を迎え、新型コロナウイルス禍の影響で合宿時は中止された市民交流イベントが実現した。今季、給与未払いを招くほど資金難にあえいだFC神楽しまね(JFL)にサポーターは最後まで熱い声援を送った。交わした笑顔や共にした苦楽の積み重ねが、文化の芽を育んでいく。(吉)