ポツリポツリと答えるいつもの口調が一転、熱を帯びた。「最初に入る頃は一番上を目指したが、なかなか現実は甘くなくて。ただ関取になれて、幕内に上がれて、三役にも上がれて、これだけ皆のたくさんの声援をいただいて、いろんな人と出会って、本当に悔いはない」▼大相撲初場所中にあった隠岐の海の引退会見でのやりとり。「(出身地の)隠岐から大相撲の世界に入る時に思い描いた土俵人生を送れたか」と質問したのに対し、郷土が生んだ名力士の表情は晴れやかだった▼関取以上に冗舌だったのが師匠の八角親方。まな弟子への評価を問われ「横綱や大関に上がるため、もっとやらなければ駄目だとの言葉が独り歩きして『稽古嫌い』という話になっちゃってね。若い頃から真面目にこつこつ稽古したから、今までできた」。十両以上で2番目に高齢となる37歳まで土俵に上がり続けた理由に触れた▼競技は違えど、こちらは現役最年長の45歳でピッチを去る。フットサルの国内トップリーグ「Fリーグ」のペスカドーラ町田(東京)で活躍した浜田市出身の金山友紀選手だ。息の長さと島根出身との関連について「地元にある小学校裏の砂浜をよく走った。浜田の自然で運動能力の基礎が培われ、ここまでできた」と分析する▼練習を積み重ねる精神力と自然環境に育まれた体の強さで、息の長い選手や力士が再び島根から現れるのを願う。(吏)