映画やテレビドラマで、思いがけない有名人や作品関係者がちょい役で顔を出すことを「カメオ出演」という▼芸能をはじめ文化取材が専門だった一つ上の先輩記者が一昨年秋、本紙デジタル版「Sデジ」のコラム「明窓プラス」で紹介していた。その1カ月前に77歳で亡くなった入社当時の上司をしのぶ内容。懐かしいエピソードを振り返っていた▼定年後に「しまね映画祭」の実行委員長を務めていた元上司が一畑電車を舞台にした2010年公開の映画『RAILWAYS(レイルウェイズ)』への出演を要請された。まさにカメオ出演。張り切って現場へ向かったものの、主演の中井貴一さんの亡父役で、自宅に飾られた遺影としてほんの一瞬登場しただけだったという。軽妙な文章から、元上司を敬愛する思いが伝わってきた▼(示)のペンネームで小欄の執筆も担当した先輩記者が58歳の若さで旅立った。病気が分かったのが1年半ほど前。治療のため入退院を繰り返し、明窓プラスも病床からの出稿だった。亡くなる数日前まで読書面のゲラ(校正刷り)確認をしていたという。仕事への情熱は元上司仕込みだったのだろう▼ちなみに「カメオ」とは、めのうや大理石などに浮き彫りを施した装飾品や工芸品のこと。端役でも、遠目からはっきりと存在が分かることがカメオ出演の由来である。派手さはなくても、その輝きはいつまでも心に残る。(健)