地面から顔を出すフキノトウ=出雲市内
地面から顔を出すフキノトウ=出雲市内

 二十四節気の「大寒」と共にやって来たここ数日の寒波は、近年の温暖化で顕著になっていた暦と実生活の体感のずれを正してくれた。災害までは招いてほしくはないが、改めて日本の四季の豊かさを思う▼二十四節気を5日ごとに3分割した「七(しち)十二候」は、動植物や自然現象の様子を具体的に表しており、興味深い。二十四節気が古代中国の暦を踏襲したのに対し、七十二候は江戸時代、日本の気候に合うように時期や表現が少し変えられた▼大寒の最初は「款冬華(ふきのはなさく)」。つい先日呼ばれた席で、大根島(松江市八束町)に己生(おのれば)え(自生)している採れたてのフキノトウをいただき、ほろ苦さをしっかり体に取り込むことができた。二つ目は「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」。言葉の通り、厚く氷が張り詰めるほどではなかったが、松江市内では、早朝に凍った川面の上を新雪が覆い、風情があった▼1月末から2月初めにかけての最後の5日間は、ニワトリが卵を産み始めるという意味の「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」。品種改良で現在は年中産卵するニワトリも、かつて冬にはほとんど卵を産まなかったらしい▼2月4日は立春。七十二候に当てはめると「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」となる。5月にも予定される新型コロナウイルスの対応緩和に向けて、マスクを外して春の息吹を全身で感じたい。(万)