「ご縁をむすび」の商品を試食する女子学生=松江市浜乃木7丁目、県立大学松江キャンパス
「ご縁をむすび」の商品を試食する女子学生=松江市浜乃木7丁目、県立大学松江キャンパス

 新型コロナウイルスの影響で伸び悩む菓子業界を盛り上げようと、松江市内の老舗和菓子店と食品会社の4社が連携した「松江OKS(お菓子)プロジェクト」が始動した。このほど「ご縁をむすび」と名付けられた新商品を発売。新たなテイストの和洋菓子の誕生は、和菓子処・松江にどんな〝新風〟を吹かせるのか。プロジェクトの舞台裏を取材した。(文化生活部・増田枝里子、大迫由佳理、坂上晴香)

 「ユズのお菓子は今回はやめよう」

 プロジェクトに参加する和菓子店の一つ、福田屋(松江市矢田町)の福田正義社長(66)は思い切った決断をした。

 福田屋の看板商品は江戸時代から伝わる「柚餅子(ゆべし)」。軟らかい求肥の食感と島根県産ユズの香りが売りだ。こだわりの食材を諦めることになったのは、地元の若い女性たちの声だった。プロジェクトに先立ち行ったお菓子の試食アンケート。島根県立大の女子学生や松江市立女子高(当時)の生徒から挙がった声は意外にも「ユズはお菓子には合わない」だった。

 代わりに浮上したのがチーズやチョコといった洋風の素材。福田社長らは和菓子らしさを残しつつ「和洋折衷」の商品を模索。その結果誕生したのが「松江ふわり」だった。

 当初はプレーン(あずき味)の1種だけを想定していたが、同社専務の妻・有香里さん(37)が「2種あった方がいい」と提案。「抹茶味」も開発したところ、試食アンケートでの女性の評判は上々だった。

 風流堂(松江市矢田町)も「五縁の味わいひとくち饅頭(まんじゅう)」の抹茶味が、意外にも若者には好評。試作段階で「甘すぎる」と感じていたところで組み合わせた抹茶味は、同社の菓子にはなかった甘さ具合。「生の声を受けて思い切ることができた」と内藤葉子社長(53)は振り返る。

 三英堂(松江市浜乃木1丁目)の「ミルク薫るミニ白どら」は、他社の商品に比べるとカラフルではなく、白一色。若者の意見を基に「島根らしさ」を追求した結果だ。同社総合企画室長の岡英介さん(37)と妻・菜々子さん(35)は一から新商品を開発するのは初めてで、その分思いも強い。ゆったりと流れる松江の空気感や八雲立つ出雲の国の「雲」というイメージにこだわった。

 中浦食品(松江市東出雲町錦浜)の「あんケーキサンド」に女性たちが寄せたのは「食べにくい」という厳しい意見。そこで、当初の試作品よりも大きさは一回り小さく、食べたときにこぼれにくいようクッキー生地の材料を小麦粉から県産の米粉に変更し、しっとり感を出した。

 発売前日の4月26日に開かれた島根県立大松江キャンパスでの試食会。女子学生からは「見た目がかわいらしい」「和と洋の組み合わせが新しく味もおいしい」といった絶賛の声が挙がった。プロジェクト発足から約8カ月。延べ100人以上の若者、女性の声を反映させた新たな和洋菓子に、太鼓判が押された。