冬の大三角とアルファルド=2月12日、三瓶自然館サヒメルで撮影(さつえい)
冬の大三角とアルファルド=2月12日、三瓶自然館サヒメルで撮影(さつえい)

南の空に控えめに光る

 季節が移(うつ)り変わると見える星も変わっていきます。明るい星が多くあってにぎやかな冬の星座(せいざ)たちは、西の空に傾(かたむ)き始めました。これまでは、たいへん明るいベテルギウス、シリウス、プロキオンという三つの星が形作る「冬の大三角(だいさんかく)」が目を引いていましたが、それに変わって南の空で光る星は、うみへび座のアルファルドです。

 この星は、冬の大三角の星のようによく目立つ1等星ではなく、それらに比(くら)べれば控(ひか)えめに光る2等星です。しかし、周りに明るい星がないため、思いのほか目に付きます。アルファルドという名前も「孤独(こどく)なもの」という意味で、そんな見え方の特徴(とくちょう)をよく表しています。オレンジ色をしていて、双眼鏡(そうがんきょう)で見ればその色がよりよく分かります。

 季節ごとの有名な1等星だけでなく、アルファルドのような少し地味な星も知っていると、星空の全体的な配置が分かるようになってきます。山陰(さんいん)地方から見える1等星は15個(こ)ほどありますが、それらは星空に均等(きんとう)に散らばってるわけではなく、1等星がない星空の一角もあるからです。

 知っている星が増(ふ)えると、季節の移ろいも細かく感じられ、アルファルドは、春の訪(おとず)れを告(つ)げているように思えます。

 なお、アルファルドのあるうみへび座は、非常(ひじょう)に細長い星座で、全体が姿(すがた)を現(あらわ)すのは春の後半となります。

◆島根県立三瓶(さんべ)自然館サヒメル天文事業室長・竹内幹蔵(みきまさ)