「どんちっちアジ」販売会場となる施設のポスターに「延期」と書いてもらった=大分県日田市元町
「どんちっちアジ」販売会場となる施設のポスターに「延期」と書いてもらった=大分県日田市元町

 <前回のあらすじ>浜田市の魚を売り込みに行く日程が決まり、気がかりはアジがとれないことだった。
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 浜田の魚を記者の古里・大分県日田市で販売する日まで、あと1週間と迫っていた。「何とか成功させたい」と活力はわいてくるが、悩ましい日が続いた。
 日田市内の新型コロナ感染拡大は大型連休中には落ち着いたものの、大分県内では増える一方。どっちつかずではいけないと前回、「地元を励ましたい」と意気込んだが…。


 ●残念だけど販売は延期●
 連休明けに出勤した10日、感染状況を鑑みた上司から「計画を見直せないか」と打診があった。
 日田の人をがっかりさせてしまうと思うと悔しかったが、他人に迷惑をかけないのが社会人のルール。お互いが気持ちよくできるまで延期することを決めた。
 宣伝に協力してくれた一人に電話すると「仕方ないよ。また決まったら教えてね」と優しい声。コロナ禍で疎遠になっていた地元の温かさを感じた。
 11日は浜田魚商協同組合(浜田市原井町)で浜田市水産物ブランド化戦略会議の事務局の定例会があった。議事は「大分県での販売について」。直前の打ち合わせになる予定だった。
 石井信孝事務局長と渡辺祐二専門部会長は「どんちっちアジ」がとれない場合を見越して、浜田港に揚がる別の魚を運ぶ案も考えてくれていた。
 気持ちを切り替え、次に向けてパワーアップさせたい。石見神楽や浜田の景色が楽しめる販促用の映像とディスプレーがあると分かり、使うことに決めた。


 ●群れが北上しない●
 結果から見れば、当初の予定日(15、16日)では、どんちっちアジは間に合わなかった。島根県水産技術センター漁業生産部利用化学科の開内洋科長に話を聞くと、どんちっちアジは、長崎沖から若い群れが対馬暖流に乗って北上したもの。例年なら、4月ごろからその群れが上がってくるが、今年は大型連休を過ぎても前兆がなかった。「(2002年に)どんちっち始まって以来初めて」という。
 開内科長に電話した14日には、明るい知らせもあった。脂の乗りは足りないが、群れのアジがまとまって揚がったという。関係者は「そろそろか」と期待して待っているそうだ。
 どんちっちアジは開きにする時、調理する手が脂でぎっとりとなるらしい。せっかくの機会、自分で作ってみたい。山生まれ山育ち、魚をさばいたことはないけれど。また浜田に行ってきます。
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どんちっち編第4回は6月13日に掲載。浜田で干物作りに挑戦します。