『子どもの本で平和をつくる』ほか
『子どもの本で平和をつくる』ほか

 中学に入って初めての委員決めで、仕方なく図書委員になったのが、典(つかさ)たち1年B班(はん)の4人です。『夏のカルテット』(眞(ま)島(しま)めいり・著(ちょ)、PHP研究所)

 典、佐々矢(ささや)、幹(みき)、夏野(かの)の4人は、当番で同じ班になり、初めて顔を合わせます。しかし、佐々矢がギターを持ってきたことがきっかけで、4人は夏休みの自由課題に、歌とギターとピアノで一緒(いっしょ)に合唱と合奏(がっそう)をすることになります。そのうえ、歌(か)詞(し)が典の担当(たんとう)に!

 音楽を聴(き)くのは好きでも、作詞は全くしたことがない典。どうしたら良いか分らず、音楽の力がある他のメンバーとの差にも悩(なや)みます。その上4人は性格(せいかく)も、得(とく)意(い)なこともバラバラ。はたして課題は完成するでしょうか。

 典たちはたまたま図書館で出会いましたが、予想もしない形であうのは本も同じです。『ローズの小さな図書館』(キンバリー・ウィリス・ホルト・作、谷口(たにぐち)由美子(ゆみこ)・訳(やく)、徳間(とくま)書店)

 13歳(さい)のカイルは読書が大嫌(だいきら)いです。それなのに、父親からアルバイトをするよう言われ、やっと見つけたのは図書館で子ども向けの劇(げき)を手伝う仕事でした。

 仕方なく働き始めたカイルでしたが、ある日、本が棚(たな)から消える事件が起こります。犯人(はんにん)がなぜその本を盗(ぬす)むのか、その謎(なぞ)を解(と)くため、カイルはその本、ハリー・ポッターを読んでみることにします。ところが、本嫌いのカイルが本に夢中(むちゅう)になってしまうのです!

 実はこのお話は、カイルのひいおばあちゃんである、ローズから続く4世代の本と家族の物語です。ローズには作家になる夢(ゆめ)があったのですが、家計を助けるため14歳で移動(いどう)図書館のバスの運転手として働き始めます。ローズは人々に本を届(とど)け、本を手にした人々のたくさんの笑顔(えがお)を見ました。

 図書館の本で笑顔になったのは、戦争でめちゃくちゃになった町で、おなかがすくあまり食べものを盗もうとしたアンネリーゼも同じです。『子どもの本で平和をつくる』(キャシー・スティンソン・文、マリー・ラフランス・絵、さくまゆみこ・訳、小学館(しょうがくかん))

 アンネリーゼは、おなかがすいていても、読み聞かせで笑顔になりました。アンネリーゼに読み聞かせをしたのは、実在(じつざい)するイエラ・レップマンです。イエラは子どもには食べものと同じように、本も必要だと考えたのです。

 5月12日まで「こどもの読書週間」ですが、今年の標語は、「ひらいてとじた笑顔がふえた」です。この機会に図書館で本にであい、笑顔になる人がたくさん増(ふ)えるとうれしいです。

 (青山亜希子(あおやまあきこ)・松江(まつえ)市立第二中学校学校司書)