★5月14日付ブックトーク
★5月14日付ブックトーク

 草花や木々の緑が輝(かがや)き、小さな生きものたちが動き出す季節がやって来ました。新学期が始まり、新しい環境(かんきょう)や友だちとの出会いなど、期待と不安が入り混(ま)じっているのではないでしょうか。そんな皆(みな)さんに、とっておきのすてきな出会いのある3冊(さつ)の本を紹介(しょうかい)します。

 まずは『緑の模様画(もようが)』(高楼方子(たかどのほうこ)・著(ちょ)、福音館(ふくいんかん)書店)から。

 小学校卒業間際(まぎわ)に、ささいなはずみから学校に行かなくなってしまった主人公のまゆ子。心の支(ささ)えは物語の「小公女(しょうこうじょ)」と切り絵です。

 ある日、母親に頼(たの)まれ、家の近くにある女子校の寮(りょう)にお使いに行ったところ、その学校に入学予定の、同い年のテトとアミに出会い、3人の少女は「小公女」をきっかけにして、あっという間に親しくなります。

 学校の裏手(うらて)にあるクローバーの緑色のじゅうたん、寮に伝わる伝説、寮から見える不気味な塔(とう)の家、時おり見かける謎(なぞ)の青年、いつも怖(こわ)い顔をした白髪(はくはつ)の老人など、3人の好奇心(こうきしん)は冒(ぼう)険(けん)へと発展(はってん)し、真実を導(みちび)き出します。

 まゆ子は、夢やあこがれ、悩(なや)み、不安など友だちと共有することにより、次第に心が解放され、読む人を元気にすることでしょう。

 2冊目は『大きい1年生と小さな2年生』(古田足日(ふるたたるひ)・作、偕成社(かいせいしゃ))です。体は大きいけれど母親に頼(たよ)ってばかりの弱虫の小学1年生のまさやと、体は小さいけれど自分の気持ちにまっすぐに行動するしっかり者のあきよ。対照的(たいしょうてき)な2人は一緒(いっしょ)に登校するうちに、次第(しだい)に心を通わせ友だちになっていきます。

 ある日、あきよと同級生のまり子は大好きな、ホタルブクロの花を探(さが)しに行くため、まさやを誘(さそ)い3人で、遠くの神社の森へと出かけます。あちこち探して、やっとの思いで二つだけ花を手にしますが、帰り道に3年生の男の子たちとケンカになり踏(ふ)みつぶされてしまいます。あきよが泣く姿(すがた)を始めて目にしたまさやは、勇気を出して、友だちのために何ができるか考え、ある決心をします。

 悩(なや)みやコンプレックスのあるあきよとまさやが、友だちや自然とのふれあいの中で成長する姿(すがた)が頼もしく年齢(ねんれい)を問わず読む人に勇気を与(あた)えてくれます。

 3冊目は『ポケットのはらうた』(くどうなほこ詩、ほてはま たかし画、童話屋(どうわや))。野原に出かけたくなるような小さな詩集です。

 べびいちのすけ、かまきりりゅうじ、たんぽぽはるかなど。のはらに住む小さな生きものたちのとっておきの詩がすてきな画とともに楽しめます。

 皆さんにどうぞ、すてきな出会いがありますように。

 (佐藤和子(さとうかずこ)・米子(よなご)市立図書館司書)