『生態系と生物多様性を五感でとらえる 自然観察のポイント』ほか
『生態系と生物多様性を五感でとらえる 自然観察のポイント』ほか

 春から夏にかけて暖(あたた)かくなってくると、空き地や道ばたにぐんぐんと雑草(ざっそう)が伸(の)びてきます。青々とした緑の中には、白や黄色、ピンクや青の小さな花も咲(さ)いています。そんな雑草を紹介(しょうかい)した絵本があります。

 『ざっそう』(甲斐(かい)信枝(のぶえ)・ぶん、え、福音館(ふくいんかん)書店)

 皆(みな)さんも一度は目にしたことがあるオオイヌノフグリやハハコグサ、カラスノエンドウなど、この季節によく見かける花をつける雑草が丁寧(ていねい)にスケッチされています。

 地面に根を張(は)り、つるを伸ばし、道路のアスファルトの隙間(すきま)からたくましく伸びてくる、そんな植物の生態(せいたい)が、絵と解説(かいせつ)で分かりやすく描(えが)かれています。

 著者(ちょしゃ)の甲斐さんが、どのように絵本を作っているか分かる本があります。

 『小さな生きものたちの不思議なくらし』(甲斐信枝・著、福音館書店)

 甲斐さんは40年以上にわたって、草花や生きものについての絵本を数多くつくっています。何年も観察を続け、徹底的(てっていてき)にその生きものについて調べています。そこには生きものへの大きな興味(きょうみ)と、その絵本を手に取る子どもたちへの愛情(あいじょう)が込(こ)められています。

 科学絵本と呼(よ)ばれるジャンルの絵本は物語性(せい)がなく、小中学生の皆さんに興味を持ってもらえるかどうか難(むずか)しいそうです。単なる知識(ちしき)絵本ではなく、作り手のこころが伴(ともな)っているからこそ、甲斐さんの描く絵本は皆さんの心に届(とど)くのでしょう。

 スケッチを見て、実物の草花や生きものを見てみたくなったら、ぜひポケット図鑑(ずかん)などを持って外に出かけてみましょう。

 でもその前に、より自然観察を楽しむためのポイントをご紹介します。

 『生態系(せいたいけい)と生物多様性(たようせい)を五感でとらえる 自然観察のポイント』(桜谷(さくらたに)保之(やすゆき)・著、文一(ぶんいち)総合(そうごう)出版(しゅっぱん))

 この本では、ちょっと変わった観察の仕方が登場します。

 皆さんは、植物の葉を観察するとき、その形や色を見て、まずは植物の種類や名前を調べるでしょう。このとき、葉の虫食いのあとを見て、どんな虫に食べられたかを調べたことがありますか。

 視点(してん)を変えてみると、きっと新たな発見が生まれると思います。

 (椋田(むくだ)美香(みか)・島根県立図書館資料(しりょう)サービス係)