『がっこうにまにあわない』ほか
『がっこうにまにあわない』ほか

 2学期が始まりますね。寝坊(ねぼう)するかも…と不安な人はいませんか? 『がっこうにまにあわない』(ザ・キャビンカンパニー作・絵、あかね書房(しょぼう))は、寝坊してしまった男の子が主人公。

 玄(げん)関(かん)を飛び出した男の子は、次々立ちはだかるあり得(え)ない状況(じょうきょう)の中、ギリギリまであきらめずに走ります。果(は)たして間に合うのか? なぜそこまで頑張(がんば)るのか? 最後のページで分かります。

 おまえはまだ間に合う、と言われたのは、『考えたことなかった』(魚住(うおずみ)直子(なおこ)、偕成社(かいせいしゃ))の颯太(そうた)。祖父母(そふぼ)の家に行く途中(とちゅう)、颯太は不思議なネコに出合いました。

 ネコは、おまえはそのままだと孤独死(こどくし)する、と不(ふ)吉(きつ)な予言をします。老いて病気になり、死にそうな未来の颯太が、ネコの体を借りて中学生の颯太に忠告(ちゅうこく)しにきたのだと。

 そう言われて、颯太は考え始めます。部活や勉強で競争を強(し)いられる自分。特に祖父には、競争に勝つことを期待されています。一方で、家事や手伝いをする必要はないと言う祖父…。

 颯太はさまざまなことに気づきます。それが、未来を変えるきっかけになるのです。

 〈考えないですむことはスルーできればラク…〉でも、〈へんだと思ったことは、なかなか頭からふり落とせない。〉と思うのは、『パンに書かれた言葉』(朽木(くつき)祥(しょう)、小学館(しょうがくかん))のエリー。

 エリーは、東日本大震災(だいしんさい)の影響(えいきょう)で、母の故郷(こきょう)、イタリア北部のステラマリス村に預(あず)けられます。

 エリーを気づかってくれる祖母、陽気な村の人々に癒(い)やされながら、震災のことを忘(わす)れていいのか?という思いがよぎるエリー。

 ところが、この穏(おだ)やかな村が、第二次大戦中に悲惨(ひさん)な出来事に巻(ま)きこまれていたこと、祖母の兄パオロが、17歳(さい)でパルチザンの一人として処刑(しょけい)されていた事実、そして処刑の直前、パオロがある方法で遺(のこ)した言葉の存在(そんざい)を知ります。祖母が、その重い記(き)憶(おく)を抱(かか)えながら今も考え続けていることも。

 そしてエリーはその年の夏、今度は父親の故郷である広島で、祖父の妹・真美子(まみこ)のことを知ります。エリーと同じ13歳で、爆心地(ばくしんち)で熱線を浴びて亡(な)くなった真美子。

 忘れるということ、無関心でいるということについて、エリーは繰(く)り返し考えさせられることになります。そして、「ある言葉の力を借りて」未来に踏(ふ)み出そうとするのです。

 気づいて、考え、動き出す…そうすれば、まだ、間に合う。未来は変わっていくのかもしれません。

 (小林順子(こばやしじゅんこ)・安来(やすぎ)市立第一中学校司書)