約1万匹のマイワシが回遊する北海道登別市の水族館「登別マリンパークニクス」。「すいぞっかん」と言うことはないだろうか(資料)
約1万匹のマイワシが回遊する北海道登別市の水族館「登別マリンパークニクス」。「すいぞっかん」と言うことはないだろうか(資料)

 普段の会話の中で、洗濯機を「せんたっき」、体育を「たいく」と言うことがないだろうか。「すいぞっかん(水族館)」もそうだ。口の負担が軽くて言いやすいらしい。お詫(わ)びやお礼の際は「すいません」も使う。いずれも辞書に載る言い方ではないが、通じてしまう▼どれが正しいか、読み方や話し言葉の境界線は難しい。二つの語が合わさると読み方が変わる連濁や音便などの現象はあるものの、例外もある。例えば3階は「ん」の後は濁る傾向から「さんがい」と読むのに、3回は濁らない。同じ「ん」の後になる4階も濁らない▼もう一つは漢字の十の読み方。「二十階」の読み方は、基本は「にじっかい」だが、「にじゅっかい」と読む人が増えたため13年前、常用漢字表の備考欄に「ジュッ」の音が追加されたそうだ。今では耳にしなくなった「まんにょうしゅう(万葉集)」や「さんにょう(算用)」という言い方も辞書には残る▼身近なところでは、野菜の「きゅうり」が標準になったのは、戦後に制定された「現代かなづかい」の後から。語源的には「黄うり」で、それまでは読み方が分かれていたようだ▼言葉は時代とともに変わる。そのせいか国語学者の大野晋(すすむ)さん(1919~2008年)は見れる、起きれるなどの「ら抜き言葉」にも寛容だった。「にほん」と「にっぽん」が混在しているのだから目くじらを立てられないか。(己)