皆(みな)さんは〝料理をする〟ときはどんな気分ですか? 「楽しい」「大変」といろいろな思いがある中でも、誰(だれ)かのために作る料理は特別ではないでしょうか。
料理が苦(にが)手(て)な子が家族のために料理に奮闘(ふんとう)します。『天(てん)の台所(だいどころ)』(落合(おちあい)由佳(ゆか)・著(ちょ)、講談社(こうだんしゃ))の天のおうちでは、料理を作ってくれていたおばあさんが亡(な)くなり食生活が乱(みだ)れてしまい、これからどうなるのかと不安になります。そんなときにおばあさんと仲の良かった通称(つうしょう)〝がみババ〟に料理を教わることになります。
家族のため、そして、おばあさんの守ってきた台所のあるじになるため、天は料理の腕(うで)をみがいていき、料理コンクールにも出場します。天の料理のおかげできょうだいやお父さんも徐々(じょじょ)に明るさを取り戻(もど)していきます。
家族以外に料理を届(とど)けたい人もいますよね。『ごはん食(た)べにおいでよ』(小手鞠(こでまり)るい・著、sa(さ)tsu(つ)ki(き)・画、講談社)の森崎(もりさき)雪(ゆき)は、フランス料理店でコックのアルバイトをしたことがある父の影響(えいきょう)で、幼(おさな)いころから料理に興味(きょうみ)を持ち、中学2年になると森崎家の一人前の料理人として認(みと)めてもらえるほどになりました。
家族以外に、友だち、近所に住んでいる男の子とその母親、その親戚(しんせき)の子、最後の入院のためにパン屋を閉店(へいてん)したオーナー、それぞれに悩(なや)みやさまざまな感情(かんじょう)を抱(かか)えた人たちにも、雪は料理を作ります。そしてこう言います。「ごはん食べにおいでよ!」
学校でのお昼の楽しみである給食も、皆さんのことを思って作られています。『がんばれ給食委員長』(中松(なかまつ)まるは・作、石山(いしやま)さやか・絵、あかね書房(しょぼう))のゆうなは、くじ引きで給食委員長に選ばれます。
そんなある日、栄養士(えいようし)の藤代(ふじしろ)先生が調理主任(しゅにん)の大橋(おおはし)さん、通称〝カバさん〟と食べ残しのことで言い争いしているのを見かけます。食べ残しの量で栄養士は評価(ひょうか)され、このままでは藤代先生は学校を辞(や)めさせられるかもしれないというのです。
そこで、ゆうなは給食委員のみんなと食べ残しが減(へ)るような献立(こんだて)を話し合います。藤代先生やカバさんと一緒(いっしょ)になって考えていく中で、給食は学校のみんなのために栄養バランス良く作られていることを知ります。
思いがこもった料理は、それだけで温かい気持ちになりますね。料理を作る人、それをおいしく食べる人。〝誰か〟を思いながら料理を楽しみましょう。
(高木(たかき)典子(のりこ)・雲(うん)南(なん)市立木次(きすき)図書館司書)