営業マンとして車で飛び回っていた夫に定年後、認知症の兆候が表れた。運転をやめるように説得しても「世話(心配)ないがやー」と不機嫌に。車のキーを隠してもスペアキーを見つけ出す。目の前から隠そうと車を親族に貸し出すと、普段は乗らない軽トラックを運転していた…▼先週、松江市内であった交通安全高齢者の主張島根県大会の発表の一つ。「開戦早々、あっけなく敗退です」「『しまった!』と思った時は、もう遅かった。また敗退です」…。70歳の女性は、夫との攻防をユーモア交じりに紹介したが、事故を起こすのでは、と気が気でなかっただろう▼最終的に体調を壊して入院したのを機に運転免許証の返納に応じたというが、公共交通機関が乏しい山陰両県では深刻な悩みだ。今回は発表した7人中3人が免許返納をテーマにしていた▼このうち84歳の男性は、不測の事態に備えて先端技術を搭載した「安全運転サポート車(サポカー)」を購入したと紹介。「安全を買ったが、これに頼るのではなく、より安全運転に留意するようになった」と述べ、「返納すべき時が来れば、ためらうことなく返納したい」と続けた▼11日から20日までは島根県の「高齢者の交通事故防止運動」期間。加齢による体力や判断力の低下はいずれ誰にもやって来る。高齢者に優しい交通環境づくりに向け、サポカーに頼り過ぎず、安全運転に気を配りたい。(健)