こども未来戦略会議で発言する岸田文雄首相(左端)=11日、首相官邸
こども未来戦略会議で発言する岸田文雄首相(左端)=11日、首相官邸

 「3」は他の数字より特別な意味を持つ。「日本三景」「三種の神器」は二や四ではしっくりこない。3の意味をまとめた民間研究所はリポートで「三日天下」「仏の顔も三度まで」を挙げ、多いのか少ないのかよく分からない数字とし「受け手が都合よく解釈する曖昧さが3の良さではないか」と分析した。

 3を巡る議論が起きている。政府が「異次元の少子化対策」の一環で示した大学授業料の無償化である。扶養の子どもが3人以上の世帯は、2025年度から所得制限なく無料にする随分思い切った施策だ。欧米に比べ、教育の公的負担が低いだけに公費拡充の流れは歓迎したい。

 ただ、なぜ3人以上なのか。2人を希望する世帯は恩恵が受けられず、1人で我慢しようとするかもしれない。経済的理由で進学を悩んでいる子どもが少ない世帯が除外されるだけに、学ぶ機会の平等という観点からも問題は多い。

 人口の維持に必要な合計特殊出生率は2・07とされる。制度設計に当たっては優秀な官僚が「三日三晩」考えたのだろう。理屈としては分かるが、根拠が曖昧なまま見切り発車した感が否めない。

 少子化対策を巡っては、年少扶養控除や児童手当の見直しなど「二転三転」してきた。今3人目を産んだとして、果たして大学に進む約20年先に制度が続いているかどうか。政府への信頼が揺らぐ中で「三日坊主」にならないのを願うだけだが。(玉)