先週、今冬一番の寒気で30センチ近く積もった松江市街地の雪はほぼ消えた。積もった雪を見ながら、降雨と気温の上昇ではどちらが早く雪を解かすだろうとつまらぬことを考えてみたが、両方によって一気に消えた▼「雪解け」という言葉は、比喩的に国際間などの対立や緊張が緩むという意味で使われる。ソ連時代の作家エレンブルグが70年ほど前に発表した小説の題名に由来するという。スターリンの死後、ソ連社会の変化も反映した作品。東西対立など国際的な緊張の緩和を表す場面で「雪解け」が用いられた▼しかし、このところの世界は緊張関係が緩和するどころか、武力行使へと進んでいる。ロシアのウクライナ侵攻は丸2年になり、イスラエル軍とイスラム組織ハマスのパレスチナ自治区ガザでの戦闘も終結が見通せない。民間人にも多くの犠牲を出している▼米国と中国の対立、中国と台湾の関係なども緊張状態が続く。日本も人ごとではない。ロシア、中国、韓国、北朝鮮との間で課題を抱えたままだ。解かさなければならない「雪」は多い▼にもかかわらずだ。リーダーシップを発揮すべき政治は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で国民の信頼すら揺らいでいる。近隣国との課題に対し、一気に気温が上がって雪を解かすような打開策は見当たらない。日本の「根雪」を解かそうという熱が感じられる政治家は出てこないものか。(彦)