メジャー挑戦1年目のカブス今永昇太投手が快投を続けている。3試合目の先発登板となった敵地マリナーズ戦で連続無失点は途切れたものの、自責点は0で2勝目を挙げた▼デビュー戦は圧巻の9奪三振で、手にした初勝利の感想を聞かれ、「これから自分という選手をシカゴのファンに証明していくだけなので、特に投げる前から気負うことはなかった」「船出と例えるなら、まだ船からロープを外しただけ。これから150試合以上ある」。さらりと言ってのけるあたりが心憎い。自らの立ち位置を知り、地に足をつけるとはこういう姿を言うのだろう▼4月の半月が過ぎ、社会の大海原にこぎ出した新入社員たちの心境はいかがか。船からロープを外したとして今はまだ湾内であり、先輩の操縦で体験乗船している状態といった方がいいかもしれない。気負い過ぎや焦りは必要ない▼今永投手は冷たい雨の中、半袖姿で投げたドジャース戦後、「雨の時、そういうコンディションを見ている人にいかに感じさせないかを大事にしている」と語っていた。困難な状況に立たされた時、相手や周りに悟らせないことは社会の荒波を生き抜くために必要なスキルとなる▼とは言いながら、立派な先輩たちも内心で焦り、見えないところで愚痴や弱音をこぼしている。相談できる仲間や仕事以外ではけ口をつくることも大事。社会人人生はこの先長いのだから。(史)