かつては、怖いものの代表例に「地震、雷、火事、親父(おやじ)」が挙げられたが、今の実感では「地震、大雨、火事、ウイルス」である。その一つ、大雨が東海地方などを襲い、静岡県熱海市で3日、大規模な土石流が発生した▼急峻(きゅうしゅん)な地形で起きた土石流は、建物や車などを押し流しながら住宅が密集する坂道を約2キロも流れ落ち、麓の港にまで達した。現場では一夜明けた昨日も安否不明者の捜索が懸命に続けられた。一人でも多くの人が無事に救出されることを祈りたい▼現場周辺は土砂災害警戒区域で、付近では同日までの48時間雨量が320ミリを超え、7月の観測史上最大を記録したが、対象地域の全住民に避難を呼び掛ける「避難指示」は出ていなかった▼現地に詳しい防災の専門家によると、周辺は明治ごろから住宅や別荘が建てられ開発が進んだ地域。これまでにも小規模な土石流が繰り返し起きていたという。見晴らしがいい斜面は、リスクもあることを忘れてはいけない▼山間地が多い日本は急傾斜地が多く、災害リスクも高い。山陰も例外ではない。砂防ダムなどの整備が進められているが、近年、大雨の頻度が増し、災害の激甚化に追い付けていない。抜本的な対策である移転となると、住み慣れた土地を離れることになり、さらに容易ではない。ならばせめて、行政も住民もリスクに鈍感にならず、早め早めの避難を徹底したい。(己)