
ピゴットさんと息子のサイモンとパトリックは、素敵な家に住んでいます。でも、ママは、家の中でいつもみんなのお世話ばかりしています。
朝、パパと子どもたちは、ママが朝食を作って出してくれるのを当たり前のようにただ座って待つだけ。彼らが仕事や学校に行った後、ママは朝食を片付け、ベッドを直し、部屋を掃除し、ようやく仕事に出かけます。帰宅するとママはすぐに夕食の準備、片付け、洗濯、アイロンがけ、朝食の準備。パパたちはただ食べて寝るだけ。ママへの感謝は一切なしです。
そんなある日、ママは家出をしてしまいます。ママのいない生活はどうなるのでしょう。そして、ママは帰ってくるのでしょうか。
性別に基づいて社会や文化において望ましいとされる役割(態度や属性、行動など)を期待されること、あるいはその役割そのものを指して「ジェンダーによる役割期待」といいます。例えば男性が外で働き、女性は家事や子育てをするものといったステレオタイプな考え方が挙げられます。この作品そのものですね。
2024年7月3日に新紙幣の顔となった津田梅子は、日本の近代化をリードし、大きく貢献した女性だということで選ばれたそうです。そんな令和の時代なのに、世界経済フォーラムが24年6月に発表した世界におけるジェンダーギャップ指数で、日本の政治・経済・教育・健康の4部門の総合順位は156カ国中118位に過ぎません。
ジェンダーにおける役割期待に関する課題を解消するために、社会にある固定観念をどう取り払っていけばよいのでしょう。
絵本では、ママが家から出て行った後、パパも子どもたちも家事をするようになりました。最後にママは家に戻ってくるのですが、大好きな車いじりをする姿はとても楽しそうです。
男だからとか女だからといったステレオタイプな役割期待ではなく、パパもママも子どもも、個々の人権が尊重され、自分の得意を生かして協力しつつも自分らしく生きられる。読み聞かせでは、そんな家族になっているかどうか話し合ってみてはいかがでしょう。
作中はかわいいブタの絵がたくさん隠し絵のようにちりばめられています。絵本の原題は「PIGGYBOOK(ブタの本)」で、「piggy back(おんぶ)」とかけてあるようです。他にもいろいろな仕掛けがあります。風刺の効いた、ユーモアあふれる絵本を親子で楽しんでみてくださいね。