今年1月に閉店した一畑百貨店の建物。かつては「ピノ」として営業していた=
松江市朝日町
今年1月に閉店した一畑百貨店の建物。かつては「ピノ」として営業していた= 松江市朝日町

 年末は忙しい。皆さんもそうだろう。新聞社も正月に読者に届ける新年紙面づくりが佳境を迎えている。来年は「昭和」が始まって100年。新年紙面のテーマの一つだ▼当方は松江市出身。今は市内の商業施設に1カ所しかない映画館は昔、何カ所もあった。もちろんインターネットはない。娯楽や買えるものは限られていた。正月に繁華街の映画館で両親と『男はつらいよ』を見たのを覚えている。商業施設もあちこちにあった。今年閉館した一畑百貨店の前は「ピノ」。決してアイスや野球ゲームの1番バッターではない。中学生の頃、放課後に友人と通った▼「昭和レトロ」が1990年代半ば以降に生まれたZ世代に受けているという。例えばアナログレコード。取材した20代の記者によると、スマホ一つで何でも手に入る時代に少し手間がかかり、不便なのが新鮮らしい。現代にはない不完全さが魅力なのだろうか。都会と比べた地方の良さもそうかもしれない▼「あの頃はよかった」と若い人に押し付ける気持ちはない。若い頃、年配の人に言われた時に「ウザかった」から。でも「平成」を含めて昔の当たり前を「エモい」と感じてくれるのは何だかうれしい▼正月に家族や友人が集まる場で新聞が「バズる」。そんな皆さんに喜んでもらえる中身にしたい。共通の思いを持ち、Z世代と昭和を知る50代のおじさんが新年紙面をつくっている。(添)