世界保健機関(WHO)総会で演説するテドロス事務局長。左に「アスクレピオスの杖」がデザインされた旗が見える=2020年5月、ジュネーブ(ロイター=共同)
世界保健機関(WHO)総会で演説するテドロス事務局長。左に「アスクレピオスの杖」がデザインされた旗が見える=2020年5月、ジュネーブ(ロイター=共同)

 何とも不似合いな気がした。最近あまり目にする機会はなくなったが、新型コロナウイルス下では頻繁にニュースに登場していた世界保健機関(WHO)。そのシンボルマークをじっくり見ると、杖(つえ)に巻き付いた蛇の姿が分かる。

 なぜ蛇? 調べると、ギリシャ神話に登場する名医アスクレピオスが持つ杖に由来するらしい。患者を診察した際、突然現れた蛇に驚いて、杖で殺してしまった。ところが別の蛇が死んだ蛇の口に魔法の薬草を入れ、よみがえらせたという。

 この力に感動したアスクレピオスは、杖に巻き付いた1匹の蛇をシンボルにした。これを基に「アスクレピオスの杖」は医療・医術の象徴として扱われるようになり、WHOだけでなく、世界医師会(WMA)のロゴにも使われているそうだ。

 一般的に蛇は、毒や牙など危険なイメージを持たれがち。とはいえ、脱皮を繰り返すことから再生や蘇生の象徴としても知られる。体が成長すると窮屈さを感じ、より大きく成長するため古い皮を抜き捨てる。文字通り「一皮むけた」格好。

 辰(たつ)年が終わり、2025年は巳(み)年。動物に当てはめるなら竜(龍)から蛇にバトンタッチした。「竜頭蛇尾」(初めは勢いがよいが、終わりは振るわないこと)という四字熟語があるが、「臥龍(がりょう)蛇の勢い」(龍が横たわり、蛇がその力を合わせて一層の勢いをつける様子)の言葉もある。実(み)(巳)を結ぶ一年にしたい。(健)