東京五輪聖火リレーの中止検討を打ち出した島根県の丸山達也知事は、新型コロナウイルスの感染拡大で全国の飲食店が打撃を受けているにもかかわらず、東京都など緊急事態宣言が出た地域と、島根など感染者が少ない地域で政府の支援に差があることを疑問視している。県が同じ支援を独自に実施しようにも財源が限られており、政府との見解は食い違ったままだ。

 西村康稔経済再生担当相は19日の会見で、緊急事態宣言の対象地域にない飲食店に対する国の追加支援について、現時点では必要ないとの認識を示し、既に配分している地方創生臨時交付金の活用を求めた。

 国は、2020年度第3次補正予算に地方自治体が単独事業として活用できる同交付金を1兆円計上した。このうち、人口や事業所数を基に感染状況を加味して算定する「感染症対応分」に5千億円を確保し、人口や高齢者比率、財政力に基づき地方にも配慮する「地域経済対応分」に同じく5千億円を充てた。

 島根の交付限度額は47都道府県中、40番目の約63億円。最も多い大阪府の294億円、東京都の262億円の4分の1に満たない。県は21年度の当初予算案にこのうち16億円を充てており、残りは47億円。県内飲食店は約5700店舗あり、全店に政府の支援額と同じ1日4万円を2カ月支給すると137億円になると試算。交付金の残額を90億円上回る想定だ。

 県財政課の井手久武課長は「県が自力でやろうとすると、全額を投入しても足りない。県でできる範ちゅうを超えている」と話す。

 この1兆円とは別に、緊急事態宣言が出るなどした感染拡大地域には「協力要請推進枠」などで総額約2兆円確保。飲食店が営業時間短縮、休業した場合に支払われる協力金の財源に充てられるが、島根のような感染者が少ない地域では発動できない仕組みだ。

      (原田准吏) 島根県の丸山達也知事が県内聖火リレーの中止検討を表明したことに関し、山陰中央新報のLINE(ライン)アカウント「さんいん特報班」に、19~22日に35件の意見が寄せられた。新型コロナウイルス禍で観光産業や飲食店が苦境に立つ中、都会地と比べて地方は国の支援が弱い点を問題提起した知事の行動に、共感を示し支持する意見が大半だった。 35件中、30件が知事の行動に共感を示した。人口が少なく個人が特定されやすい地方では飲食店で感染者が出れば風評被害で店はつぶれてしまうとの懸念や、国の支援に地域格差がある点を疑問視する声があった。知事の行動に対し「注意しようと思っています」と述べた自民党の竹下亘衆院議員(島根2区)への反発の声が交じった。

 3件が反対意見で、聖火リレーを引き合いに、国の支援を受けようとする手法を問題視する声があった。 「さんいん特報班」では聖火リレー中止検討に関し、知事の行動への受け止めや業界の支援などについて随時、意見を募集し、一部を紙面に掲載します。QRコードを読み取ってアクセスし、意見の最後にお住まいの市町村、性別、年代、職業を可能な範囲でお書きください。