短歌 寺井 淳選

本好きのわれは目の為本を絶つせめて背表紙本屋をのぞく    隠岐の島 高橋 恭子

  【評】加齢ゆえの目の衰えか。本好きからすれば本を読むための目。その目のために本を読むのを控えねばならないという理不尽。下句に共感を覚えることひとしおです。

六歳になったばかりの一年生小さな小さな私であった       出 雲 嘉本  靖

  【評】眼前に新入生を見ての感慨と読みました。無邪気で、何より無限の時間があったあの頃。自分は何をしてきたのかという、誰もが覚える懐かしさとわずかの後悔ないまぜの感慨です。

看板の字もうすれきて「天津醫院」亡父(ち...