宍道湖でサップを楽しむ子どもたち=2024年8月、松江市岡本町
宍道湖でサップを楽しむ子どもたち=2024年8月、松江市岡本町

 今年の夏、島根半島の海浜でサップに初挑戦した。サップとはスタンドアップパドルボードの略で、サーフボードのような浮体物に乗り、1本のパドルを漕(こ)ぎながら進む海洋スポーツだ。

 砂浜から漕ぎ出し、恐る恐るボードの上に立つ。「案外簡単」と思った途端、バランスを崩し海に落ちた。それが実に楽しい。透明な海と心地よい風。泳げなくてもライフジャケットを着ているので安全だ。

 ライフジャケットは遊漁船や遊覧船でも着用が義務付けられ、航空機でも丁寧に指導してくれるが、実際に「海に落ちる経験」はなかなかできない。インストラクターの話では、事故や災害に備える意識からか「ライフジャケットの体験が貴重だった」という利用者は多いらしい。

 今回の海は30年ほど前には、海水浴客で「芋の子を洗う」ようなにぎわいだった。当時、生活排水が流れ込み、きれいとは言えなかった水質は劇的に改善。陸から流れ込む物(栄養塩)が減ると海洋生物も減る半面、観光地としては一級品になる。

 残念ながら「海の家」はなくなり、かき氷やサザエ焼きの匂いは過去のものになったが、親子連れの楽しそうな様子は変わらない。山陰地方の「白砂青松」の海岸から松が消え、砂浜が痩せた場所もあると聞く。一方、温暖化の影響か熱帯の魚は増えている。自然には勝てない。ならば、新しいアイデアで海を活用し、後世に残していきたい。(裕)