先月、85歳で亡くなった漫画家の松本零士さんが長年住んでいた東京都練馬区大泉地区は、十数年前に当方が暮らしたアパートからバスで約15分程度と近く、家族連れで通った地域だ▼練馬区は「日本アニメ発祥の地」といわれ、中でも大泉はアニメ制作を先導した東映アニメーションの本拠地だけでなく、西武池袋線の大泉学園駅の周辺には松本さんの代表作である「銀河鉄道999」の人気キャラクター・メーテルをモチーフにした「ゆめーてる商店街」があり、アニメ愛を前面に出したまちづくりを展開している▼松本さんが2008年に名誉区民となったのは、漫画家としての業績だけでなく、商店街の盛り上げやイベントへの協力など、地域とのつながりをとても大切にしていたからだ、と記憶している。わずかな期間だったが、同じ区民だったことを誇りに思う▼その意味で、8年前に93歳で死去した境港市出身の水木しげるさんにも共通する要素がある。SFに妖怪と描いた対象は違うものの、限りある命の人間への慈しみやいさめがベースにあり、地域住民への優しいまなざしにつながっている▼5日には境港市で水木さんの「生誕101年誕生祭」が開かれる。大泉はまだ、松本さんがいなくなってしまった悲しみの余韻の中にあるかもしれない。だが、死してなお地域に生き続けている水木さんの「姿」が元気を与えるのではないか。(万)