「吹奏楽の甲子園」と呼ばれる全日本吹奏楽コンクールにかつて、3回連続全国大会に進出した団体は翌年欠場する「三出制度」があった。常連校以外に出場機会を与える一方、正当な競争を奪うと不評だった。選抜大会を終えた高校野球で適用したら大騒動だ。だが「縮退」を防ぐ三出制度の狙いは分かる▼大型スーパーの出現で地元商店街が寂れたり、自然界の多彩な在来種が一部の外来種に駆逐されたりする現象が縮退に当たる。それで多様性を失っても一概に経済、自然環境が悪化したと言えず、衰退とは意味が違う▼甲子園の水準は常連校が支えている部分が大きい半面、多様性は損なう。夏の甲子園に3回以上連続出場したのは2022年大会が5連続2校を含む7校、21年は10連続を筆頭に6校あった。30年前の1992年は、全5打席敬遠された松井秀喜さん擁する星稜の4連続と3連続の計2校、91年も同じく2校だった。数字に縮退をみる▼少数精鋭と言えば聞こえは良く、この間に米大リーグで活躍する多くの逸材も高校球界から育った。だが裾野の広がりという面で好ましくなく、競技者減にあえぐ▼山陰両県の球児はまだ甲子園の夢を持てそうだが、強烈な常連校がいる地域はどうか。強豪に挑む前から善戦狙いでは切ない。せめて普通の高校から後にプロ入りする選手を見たい。花はいつか、どこかで咲くと言わんばかりに。(板)