「おどりたいの」(左)ほか
「おどりたいの」(左)ほか

 秋の足音が聞こえてきて、だんだんと夜が長くなってきましたね。今回は、「夜」に関係する本を紹介(しょうかい)したいと思います。

 1冊(さつ)目は『おどりたいの』(豊福(とよふく)まきこ作、BL出版(しゅっぱん))です。夜に森のはずれの洋館から流れてくる美しい音楽が気になった子うさぎが、その中をのぞいてみると、そこはバレエ教室でした。かわいい衣装(いしょう)でおどる女の子たちを見た子うさぎは、自分もおどってみたいと、その教室を訪(たず)ねます。

 そしてやがて、女の子たちと一緒(いっしょ)に楽しそうにおどる子うさぎを見た、他の子うさぎたちも仲間に加わります。楽しくおどる子うさぎたちでしたが、人間の女の子たちと一緒のバレエの発表会には出られません。それを聞いてがっかりした子うさぎたちたちでしたが、一人の女の子から、落ち込んだ気持ちが吹(ふ)き飛ぶようなある提案(ていあん)をされます。その提案とは…?

 子うさぎたちも女の子たちも、みんなが笑顔になるお話の最後に、こちらもつられて笑顔になってしまう作品です。

 2冊目の『よるにおばけと』(みなはむ作、ミシマ社)は、女の子がおばけに誘(さそ)われて、夜に一緒にお出かけするお話です。夜に外を歩くのをこわがる女の子に、おばけは「だいじょうぶいっしょにいるから」「だいじょうぶここにいるよ」と、やさしく声をかけます。どうやら、おばけは女の子に何か見せたいものがあるようでした。

 夜の暗くてちょっと不気味な中を歩いていく二人ですが、一緒だからきっと「だいじょうぶ」と思わせてくれる、こわいけれどこわくない一冊です。

 そして、最後に紹介する本は『宇宙(うちゅう)のみなしご』(森絵都(もりえと)著(ちょ)、講談社(こうだんしゃ))です。両親が仕事で家を留守(るす)にしがちだったため、幼(おさな)い頃(ころ)から、二人きりで過(す)ごすことが多かった、中学1年生の姉・陽子と一つ下の弟・リン。二人は、退屈(たいくつ)しないためにおもしろい遊びを考える続けることを「生きていく知恵(ちえ)のすべて」と表現(ひょうげん)するくらい、大切だと考えていました。

 そんな二人が思いついた新しい遊びは、夜に家を抜(ぬ)け出して、他人の家の屋根に上ること。最初は二人だけの遊びだったはずが、仲間がまた一人、また一人と増(ふ)えていきます。

 私(わたし)ははじめ、「新しい遊びを考える=生きていく知恵」という言葉が大げさに感じられたのですが、読み進めるうちに、姉弟(きょうだい)にとって、それが決して大げさではなかったことに気づかされました。『宇宙のみなしご』というタイトルの意味にも注目して読んでほしい本です。

 おどりたくなる夜、おでかけしたくなる夜など、夜はもしかしたら、お話が生まれやすい時間なのかもしれませんね。この秋は、いろいろな夜のお話を楽しんでみませんか。

 (古德(ことく)ひとみ・境港(さかいみなと)市民図書館司書)