牛舎内を照射する 緑色のレーザー光=浜田市三隅町井野、浜田メイプル牧場
牛舎内を照射する 緑色のレーザー光=浜田市三隅町井野、浜田メイプル牧場

 浜田市三隅町にこんな伝承がある。時は戦国時代、三隅川河口に築かれた針藻城(はりもじょう)の城主は、城山に棲(す)むカラスたちを大層かわいがったそうだ。

 毛利方の軍に攻め込まれた際、カラスは大群を成してけたたましく襲いかかり、敵陣を退散させた。その後、夜襲を食らい城は陥落する。自決した侍たちの後を追うように、カラスは一斉に火の中に飛び込んだと伝わる。

 この鳥が厄介物扱いされるようになったのは、賢くなり過ぎたせいだろうか。伝承が残る三隅町の牧場でカラスを寄せ付けないよう牛舎にレーザー光を照射する実験が行われ、効果を上げていると先日の本紙にあった。群れが牛舎に侵入して牛を襲い失血死させる被害まで出ているのだとか。追い払うのに花火や爆音機を鳴らしても、しばらくすると学習して効き目がなくなるというから手ごわい。小学校低学年並みの知能を持つといわれるのもうなずける。

 人を襲うクマの恐怖よりましだと、畜産業界は言っていられない。北海道で見つかったカラスの死骸から今季初の高病原性鳥インフルエンザウイルスも確認された。かねて養鶏場へのウイルス媒介が疑われており、難敵の一層の警戒が必要だ。

 カラスもまさか人間を困らせようとしているわけではあるまい。日本神話に登場する八咫烏(やたがらす)は、神の使いとされる。人間界に何か伝えたいことがあるのだろうか。悪いお告げでないといいのだが。(史)