『ラベンダーとソプラノ』(写真左)ほか
『ラベンダーとソプラノ』(写真左)ほか

 日々の生活、それは誰(だれ)かとの出会いからつながっていきます。親や兄弟、友達など、誰かがいなくては私(わたし)たちの暮(く)らしは成り立ちません。考えてみれば、人との出会いは不思議です。

 『ラベンダーとソプラノ』(額賀(ぬかが)澪(みお)作、岩崎書店(いわさきしょてん))の主人公、小栗(おぐり)真子(まこ)は小学校の入学式で合唱を聞いた時、自分も4年生になったら合唱クラブに入って歌いたいと思い、希望をかなえます。でも5年生になってパートリーダーになったころから、クラブの目的が合唱コンクールで優勝(ゆうしょう)することになってきて、重苦しい空気の中で過(す)ごすことになりました。

 そんな中、真子は朔(はじめ)と出会います。朔はすばらしいボーイソプラノの持ち主で、真子に合唱クラブとは違(ちが)う歌の楽しさを教えてくれました。それはトコハナ商店街にある半地下合唱団(だん)の歌の集いでした。真子は、そこで歌を歌うことの意味と、考え方の違う人とどう付き合うかなど、大人になっていくために必要なことを少しずつ学びます。

 次に紹介(しょうかい)する出会いの本はユーモアあふれるものです。

 ある雨の日、学校帰りのサキちゃんが出会ったのは、黒いコウモリガサを持って、自分のことを「わがはい」という不思議な女の子でした。『ふしぎなコウモリガサ』(如月(きさらぎ)かずさ作、小峰(こみね)書店)は『なのだのノダちゃん』シリーズの第1作です。不思議な女の子は、本当はロムニア・クルトゥシュカラーチ・パパナッシュ17世といいますが、言葉の終わりに「~なのだ」というので、サキちゃんはノダちゃんと呼(よ)ぶことにしました。

 ノダちゃんは十字架(じゅうじか)がきらいで、まっくろ大好きの黒ずくめで、魔女(まじょ)の知り合いがいて、コウモリをしもべにしています。もしかして?

 そんなノダちゃんと友だちになったサキちゃん、毎日にドキドキが訪(おとず)れます。どんどん不思議なことが起きて、ゆかいな冒険(ぼうけん)をするので、ぜひ、シリーズで読んでくださいね。

 さて、出会いを考える時、気づきにくいことがあります。それは自分との出会いということ。『おさるはおさる』(いとうひろし作・絵、講談社(こうだんしゃ))では、みんなと同じように暮らしていたおさるが、ある日、耳をかにに挟(はさ)まれて自分だけ「かにみみさる」になってしまったことから、自分とは何か、みんなと同じとは何かを考え始めます。考えた結果は…。自分との出会いで自分を見つめ直すのは、実はとっても大事なことだと分かりますよ。

 本の世界でのいろいろな出会いを紹介しました。今年は良い出会いがありましたか。来年も、みなさんに良い出会いがありますように。

 (山尾典子(やまおのりこ)・大田(おおだ)市立仁摩(にま)図書館司書)