10色のくれよんたちは、いつまでも新品のままじっとしているのが退屈で、飛び出しました。黒いくれよんのくろくん以外は大きくて白い画用紙を見つけて、色とりどりのお花やお空を自由に描きます。くろくんも描こうとすると、「きれいに かいたえを くろくされたら、たまらないよ……」とみんなは、くろくんを仲間外れにします。
くろくんは、「なんで ぼくって、こんな いろなんだろう……」とさみしそう。このままくろくんは、ひとりぼっちのままなのかな?
物語からは、誰にでも良いところがあり、その良さを個性として大事にしてほしいこと、そしてお互いの良さを引き出し合う、やさしい世界の尊さを感じることができます。
パステル調でとてもきれいなこの絵本。他にも見どころがたくさんあります。

下塗りした色の上に違う色を塗り重ね、上の色を引っかいて削り取り、下の層の色を出す絵画技法を「スクラッチ」といいます。作中にもこの技法が使われ、「黒」はとてもいい仕事をします。親子でスクラッチに挑戦し、「くれよんのくろくん」の世界を遊んでくださいね。
物語には「トットコトットコ」「クルクルクルッ」「グルグルグルッ」など、たくさんのオノマトペ(擬態語や擬音語)が出てきます。体育や図工の授業で動作を説明するときなどに先生がオノマトペをよく使いますが、知的障害児や発達障害児の中には、オノマトペだけでは状態を理解するのが難しい子もいます。
読み聞かせは音の緩急や高低、速さなどを意識し、手で動作を再現しながらオノマトペを読むと、クレヨンたちの動きをイメージしやすく、楽しい雰囲気になること間違いなしです。
幼稚園や保育所は色を用いたモノ、コト、シーンがたくさんあります。クレヨンや画用紙、折り紙などの用具やそれらを使った製作遊び、「○○色の折り紙を使います」「○○色の線の上に並びましょう」といった声掛けや指示などです。
でも、一般的な色の見え方と異なる見え方「色覚多様性」のある子どもの割合は男性で20人に1人、女性で500人に1人。色覚多様性に理解を深め、関わり方を知っていただけたらうれしいです。
また、「肌色」という色名は、人間の肌の色に固定観念を与える可能性があるとされ、「うすだいだい」などに変更されています。色の名前にも多様性が尊重されていることに、思いを巡らせてみましょう。