「太陽の塔」がある万博記念公園のモノレール駅前。大阪・関西万博ののぼりがはためいていた=25日、大阪府吹田市
「太陽の塔」がある万博記念公園のモノレール駅前。大阪・関西万博ののぼりがはためいていた=25日、大阪府吹田市

 いつ見てもその異様な風貌の意図は理解できない。だが印象は強烈だ。1970年開催の大阪万博のシンボルで芸術家・岡本太郎さん(1911~96年)がデザインしたことでも知られる「太陽の塔」の話。

 現在も残る高さ約70メートルの塔に足を運ぶと、正面に二つの顔が見えた。頂部にある「黄金の顔」と腹部の「太陽の顔」。背面に回ると「黒い太陽」と呼ばれるもう一つの顔が現れた。「太陽の顔」は現在を、「黄金の顔」は未来を、「黒い太陽」は過去を表しているという。ただ作者は狙いを語っておらず、パンフレットには「どうぞ自由に感じてください」の文字。その神秘さが想像力をかき立てる。

 塔がある万博記念公園(大阪府吹田市)のモノレールの駅前には、4月13日に始まる大阪・関西万博ののぼりがはためいていた。その光景は55年前の過去と現在との“結節点”のように見えた。

 大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)が会場となる2度目の「大阪万博」のシンボルが、会場の中央をぐるりと取り囲む1周約2キロの木造巨大屋根「リング」。木材を組み合わせた構造は「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を表すという。こちらの意図は明瞭だ。

 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにした今回の万博では、目玉とされる「空飛ぶクルマ」など“未来の姿”が提示される。希代の芸術家は半世紀以上前、そんな未来を想像していたのだろうか。(健)