グータッチを交わす候補者と有権者=22日午前、松江市内
グータッチを交わす候補者と有権者=22日午前、松江市内

 選挙を巡っては「手を握った数しか票は出ない」という格言がある。検証しようがないが、今もその言葉は「有効」とされる。特に人口が少ない山陰においては、取材を通じて知る限り、選挙に強い政治家ほど丁寧に実践している▼参院では6年前の選挙から鳥取と島根が合区選挙区となり、握手どころか隠岐4町村では選挙期間中、候補者が誰も街頭演説に立たなかった珍事が起こった。きのう公示された合区後3度目となる参院選はどうだろうか▼コロナ禍は有権者と候補者との距離をさらに遠のかせた。握手の代わりに主流となっている「グータッチ」は衛生的で新鮮さがある。だがまだ互いに恥ずかしそうにも見える▼英国の動物学者、デズモンド・モリス氏は近著『アートにみる身ぶりとしぐさの文化史』(三省堂)で政治家の握手を紹介している。握手する右手(利き手)の上に左手を添える。包み込むように。あいさつという礼儀を示した上に、抱擁するにも似た親しみを加える効果があるという▼政治家の値打ちが握手の回数で決まるわけではない。しかも、政策や人柄を伝える方法はデジタルの活用を含めて多様化している。コロナや合区といった壁や距離が底流にある今回の選挙。握手の復活はまだ難しいにしても、訴える政策の中身と同じくらいコミュニケーションの質も高め、内にこもりがちな世間の空気を18日間で変えてほしい。(万)