インド・ナグプール市内に建立された仏教寺院の落慶法要に招かれた佐々井秀嶺さん。同市を拠に仏教の復興に尽くしている(共同)=2014年撮影
インド・ナグプール市内に建立された仏教寺院の落慶法要に招かれた佐々井秀嶺さん。同市を拠に仏教の復興に尽くしている(共同)=2014年撮影

 きょう4月8日は仏教を開祖した釈迦(しゃか)の誕生日とされる。インドで生まれ、悟りを開いた。ただ仏教の母国はヒンズー教徒が8割を占め、仏教徒は1%に満たない。そんなインドの仏教界を引っ張り再興を目指すのは日本人だという▼岡山県新見市出身の佐々井秀(しゅう)嶺(れい)さん。中学卒業後に上京すると酒と女に溺れ、自殺未遂を繰り返す。25歳で出家、32歳でインドに渡るというすさまじい経歴だ。出家までに米子市の親戚宅に身を寄せ、米子東高校に入学するなど山陰にも縁がある▼今年88歳の老僧は、インド中央部に位置するナグプール市で今も雑然とした狭い部屋に住み、布教を続けている。ナグプールは1956年、ヒンズー教に基づく身分制度カーストの廃止を明記したインド憲法の起草者・アンベードカル博士が、それでもなお激しい差別に苦しむ最下層の50万人を率いて、仏教への集団改宗をした地。佐々井さんはその意思と活動を引き継ぐ▼4年前、一時帰国した佐々井さんの講演が安来市内であった。だみ声、怒鳴るような口調に波(は)瀾(らん)万丈の人生が表れていた。ただ、くしゃっとした笑顔が魅力的だった▼講演後の懇談の場で、未婚を貫くという女性に「結婚して子どもを産めよ」と説いた。人間の平等を唱え、多くの人を救う佐々井さんの言葉。そこに行き着くのかと思いつつ割り切れなさが残ったのは、こちらの修行が足りないからか。(衣)