「うたがう」ことってどう思いますか?「信じる」ことの反対で、何だか悪いイメージでしょうか? でも実は「うたがう」ことって私(わたし)たちがいつもしていて、必要なことなんです。
見た目にだまされてしまう絵本『じゃない!』(チョーヒカル作、フレーベル館)は、ものの表面に別のものの絵を描(か)いている写真絵本ですが、とってもリアルで、中身を知ってから見返しても見抜(ぬ)けません。表紙では、なぜかバナナの中にキュウリが一本交じっていますが、このキュウリの皮をむいてバナナが出てくる写真は分かっていても混乱(こんらん)します。
ほかにも、本物そっくりなイチゴやミカンにドーナツ…中身が何かは見てのお楽しみ。初見(しょけん)では絶対(ぜったい)当てられません!
どうなっているのか何度も見たくなる、そんなだまし方は楽しいですが、もしもだます人が悪人だったらどうなるでしょうか。
いたずら好きの少年ティエリーが、てきとうに電話をかけたらつながったのは『なんでもただ会社(がいしゃ)』(ニコラ・ド・イルシング作、末松(すえまつ)氷海子(ひみこ)訳(やく)、三原(みはら)紫野(しの)絵、日本(にっぽん)標準(ひょうじゅん))。欲(ほ)しいものをなんでも「ただ」で届(とど)けてくれるという夢(ゆめ)のような会社でした。
ただし、条件(じょうけん)が一つ。最後に「ん」が付くものを頼(たの)まないこと。もし破(やぶ)ると恐(おそ)ろしいことになってしまいます。
ティエリーは気を付ければ大丈夫(だいじょうぶ)と、毎日「ん」が付かないおもちゃを頼み続けますが…。さてうまくいくのでしょうか?
うまい話には裏(うら)がある、という言葉があるように、現実(げんじつ)にも人をだまそうとする悪い人たちはいます。だまされないためには、物事をうたがってよく考える練習をしてみるといいかも?
自分の身の回りのことから時間まですべてをうたがっているのは、『うたがいのつかいみち』(清水(しみず)哲郎(てつろう)文、飯野(いいの)和好(かずよし)絵、福音館(ふくいんかん)書店(しょてん))に出てくる、自称(じしょう)「うたがいの名人」ゴフムさん。ゴフムさんとそれに答えるソルテスさんの問答で、「当たり前のこと」をうたがっていきます。
「今読んでいる本は本当に本なのか、本当にここにあるのか、思いこんでいるだけで実はぜんぶ夢の中のできごとでは?」という疑問(ぎもん)には、さてどう答えればいいのでしょうか?
自分の存在(そんざい)や世界について、当たり前のことをうたがってその答えをまたうたがって…くり返していくうちに頭がぐるぐるしてきますが、考えたことのない問いに、日常(にちじょう)使うのとは違(ちが)う頭が動くのが感じられて新鮮(しんせん)です。友達と一緒(いっしょ)に考えてみても楽しいかも。
「うたがう」って案外面白(おもしろ)いことかもしれませんよ。
(藤原(ふじはら)佐(さ)緒里(おり)・隠岐(おき)の島(しま)町図書館司書)