「魔女の宅急便」(左上)ほか
「魔女の宅急便」(左上)ほか
「魔女の宅急便」(左上)ほか

 新しい年が来ました。今年はどんな年になるのでしょう。ワクワクしますね。

 『魔女(まじょ)の宅急便(たっきゅうびん)』(角野栄子(かどのえいこ)作、林明子(はやしあきこ)画、福音館(ふくいんかん)書店)の主人公キキは13歳(さい)。今年、魔女としてひとり立ちします。魔女のいない町を選んで、ひとり暮(ぐ)らしを始めるのです。

 「あたしはあたし、新しい魔女なんだから」と意気込(ご)んで出発したキキですが、魔女のことをよく分かっていない町の人は、キキをすんなりとは受け入れてくれません。

 悩(なや)んだ末に、キキは、ほうきで飛べることを生かして「宅急便屋」をしようと思いつきます。そして、なんと「お正月」まで運ぶのですが…どうやって運んだと思いますか?

 こうして町の人たちと小さな「もちつもたれつ」を積み重ねて、キキは一人前の魔女になっていくのです。

 人はだれでも、新しい自分へと変化していくものかもしれません。

 『きみの話を聞かせてくれよ』(村上雅郁(むらかみまさふみ)作、カシワイ絵、フレーベル館)は、新船中(あらふねちゅう)という中学校を舞台(ぶたい)にした連作短編集(たんぺんしゅう)。七つのエピソードの主人公たちは、それぞれが重苦しい気持ちを抱(かか)えています。

 例えば虎之助(とらのすけ)は、「女子っぽい男子」という勝手な決めつけやからかいにうんざりしています。六花(りっか)は、唯一(ゆいいつ)の友人である早緑(さみどり)に悩みと不満を吐(は)き出し、共感してもらおうとしたのですが、逆(ぎゃく)に否定(ひてい)され、孤立(こりつ)しています。

 学校の中で、エピソードは少しずつ重なり、登場人物たちはあちこちで関わりを持ち始めます。そして、お互(たが)いにそれと意識(いしき)せずに影響(えいきょう)を与(あた)え合う中で、自分を変えるきっかけをつかんでいくのです。

 物語の最後に、登場人物たちを静かに見守り続けているものの存在(そんざい)が明らかになります。それは何でしょうか?

 『クマのプーさん』(A・A・ミルン作、石井桃子(いしいももこ)訳(やく)、岩波(いわなみ)書店)に登場するクマのぬいぐるみのプーは、何もしゃべらず、動きもしません。でもクリストファー・ロビンにとっては、プーは生きて動いています。

 プーやコブタ、ロバのイーヨーたちは、一緒(いっしょ)に冒険(ぼうけん)をする仲間。プーたちは、謎(なぞ)の生物・ゾゾをつかまえる計画を立てたり、大洪水(だいこうずい)の危機(きき)にみまわれたコブタを救助(きゅうじょ)したりします。ただ、仲間同士(どうし)でやりとりするうちに話がこんがらがって、とんちんかんなことになってしまうのですが…。

 やがてクリストファー・ロビンも成長し、続編(ぞくへん)の『プー横丁(よこちょう)にたった家』では、プーとのお別れのときがやってきます。

 でも、大丈夫(だいじょうぶ)。このお話の最後に、クリストファー・ロビンは、プーとある約束をしました。その約束は、たぶん、ずっと変わらないでしょう。

 今年、あなたにどんな変化があるでしょう? そして、変わらないものは何でしょう?

(小林順子(こばやしじゅんこ)・安来(やすぎ)市立第一中学校司書)「魔女の宅急便」(左上)ほか