小豆。3粒包める布は捨てるなという教えが昔はあったという(資料)
小豆。3粒包める布は捨てるなという教えが昔はあったという(資料)

 「小豆3粒包める布は捨てるな」。絹はもとより木綿や麻の布も貴重だった昔の言葉だという。小豆1粒が約5ミリとすると布は2センチ四方くらいか。倹約というより、どんな物も最後まで大切に使いなさいということだろう▼わが家も古くなったタオルや肌着は適当な大きさに切り、雑巾やティッシュ代わりに使うが、最終的にはごみ箱へ行く。そこへゆくと、先人のリサイクルの営みは無駄がない▼江戸時代、畑で育った綿花や桑の葉を食べる蚕の繭から糸が紡がれ布に織られ、着物として活用された後、布に戻り端切れ、おむつ、雑巾として使われた。最後は燃やされて灰になり、その灰は肥料として畑にまかれたという。草木や虫の命をまとっていると思えば、当然の行動だったのだろう。自然と共にある暮らしは、何とも賢い▼近代化した社会は法で規制するしかないのか。欧州連合(EU)は、アパレル事業者に売れ残った衣料品や靴の廃棄を禁止する規制を来年にも導入することで合意した。安価なファストファッションの流行が大量生産、消費、廃棄の一因とみており、それらを作る発展途上国での劣悪な労働環境や低い人件費への対応も含まれるようだ▼割高でも環境に配慮したフェアトレード(公正な取引)商品を選ぶなど、買い手ができることもある。懐に余裕がなければ難しいかもしれないが、長い目で見れば誰にとっても「お得」なはずだ。(衣)