弁当を準備する近藤博子さん(中央)ら=東京都大田区、気まぐれ八百屋だんだん
弁当を準備する近藤博子さん(中央)ら=東京都大田区、気まぐれ八百屋だんだん

 ずっと抱いてきた違和感を行動に移した。東京都内で子ども食堂を運営している近藤博子さん(65)=安来市広瀬町出身=は今春、「(国の)大きな流れから一線を引く」とフェイスブックに投稿。活動を縮小した。

 全国に先んじて2012年に開設した、子ども食堂の「名付け親」。食堂の数が徐々に増えていく状況を「日本もまだまだ捨てたものではない」と好意的に受け止めた。

 その数はコロナ禍も相まって急増し、24年度に初めて1万カ所を超えた。だが「子ども食堂=貧困対策」というイメージが定着するにつれ、役割と負担は増大。自身が運営する食堂も、自治体からの依頼で精神疾患のあるシングルマザーらに弁当を配布。物価高騰の中、食料の確保は難しくなり、活動資金に充てる国などの助成金が交付されるまで借金をする食堂もあるという。

 食堂の運営を細く長く続けるためにも、ボランティアの域を超えた活動は限界に近く、投稿で疑問を投げかけた。食堂数が増えても国全体で子育てしやすくなったとは感じない。「数を増やすだけではなく、貧困問題の根本的な解決策を議論しなければならないのではないか。今のままではブームで終わってしまう」。

 夏の参院選が間近に迫った。目の前の課題解決だけでは対症療法にしかならず、物足りない。中長期的な視点で根本的な解決策を提示しなければ、議席を伸ばす政党もブームに終わる。(吏)