山(さん)陰(いん)では、今は太陽が沈(しず)むのが午後7時ごろで、その後の西の空を見ていると30分もしないうちに星が一つ見つかります。この「一番星」は金星(きんせい)で、空の暗さが増(ま)すと、どの星より強く輝(かがや)きます。しかし、いつも金星が夕空に出る一番星になるわけではありません。
金星は見かけ上、太陽からあまり遠くへは離(はな)れないため、真夜中に見えることはありません。太陽が沈んだ後の西の空に見えるか、まだ太陽が昇(のぼ)る前の東の空に見えるか、あるいは太陽に近すぎて夜空に出ないか、どれかになります。
今のように、夕方から夜のはじめに見える金星は「よいの明星(みょうじょう)」と呼(よ)ばれます。今年は1月半ばぐらいから、よいの明星として見えていて、特にこれから6月半ばまでは、高いところで目立ち、見ごろとなります。そして、7月10日ごろには、最も明るくなります。
その後7月半ばからしばらくは、金星は太陽に近づくため、見るのが難(むずか)しくなります。8月終わりごろになると、今度は日の出の前の東の空に移(うつ)ります。こちらは「明けの明星」と呼ばれます。来年の2月半ばになると、また金星は太陽に近づき、見にくい時期が次は半年以上続きます。
たいへん明るい金星ですが、このようにいつでも見やすいわけではありません。今が見るチャンスです。
(島根県立三瓶(さんべ)自然館サヒメル天文事業室長・竹内幹蔵(みきまさ))=隔週掲載(かくしゅうけいさい)=