コロナ禍前の2019年に公演する石見神楽東京社中=東京都内
コロナ禍前の2019年に公演する石見神楽東京社中=東京都内

 首都圏在住の島根県出身者でつくる「石見神楽東京社中」が活動10年を向かえた。神楽の知名度アップを目指し発信を続けてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大により一時は休止に追い込まれた。再起となる10周年記念公演を7月に予定しており、新しい衣装で節目を飾ろうと準備を進めている。
 2011年に活動を始め、約20人が所属。文京区内のホールや首都圏での県関連イベントで神楽舞を披露して、ファンを増やしてきた。年間30回程度の公演は、コロナ禍により20年はことごとく中止となった。発足時から携わる小加本行広代表(39)=浜田市出身=は「集まって練習さえもできない状態で、状況を受け止め活動を休止せざるをえなかった」と振り返る。
 10周年記念公演は7月3日に杉並区高円寺の劇場「座・高円寺2」で開く。感染防止対策のため来場者数を収容人数の半分以下にし、オンライン配信も実施。昼と夕2回公演で「八幡」「恵比須」「大蛇」などの演目を披露する。
 目玉として予定するのは、新たな衣装のお披露目だ。石見神楽の衣装は金や銀の糸を使い、職人が繊細な刺しゅうで鶴、虎、龍などの立体的な装飾を施すことが特徴で、こだわりの「一点物」は各社中の誇りとなっている。東京社中は金蘭と呼ばれる金箔や金糸でつくる衣装を持っているが、舞える演目が「恵比須」や「大蛇」に限られていた。
 装飾を施した衣装があれば神や鬼が登場する花形演目に幅が広がる。小加本代表は「10年、20年と次世代につないでいくものにしたい」と力を込める。
 衣装の制作費をクラウドファンディング(CF)で募っている。目標金額は100万円に設定。2500円~30万円の6コースから寄付額が選べ、石見神楽にまつわるグッズや出張公演などを特典としている。衣装は江津市内の専門業者に注文する。
(白築昂)